top of page

ひなたぼっこ10周年記念原稿より

 みんなの居場所「ひなたぼっこ」          

S.M          

 

「私なんて生きていても意味がない」そう思ったのは小学校高学年の時です。その時私が見ていた世界は、本当に小さな小さな世界でした。私は糸が切れたように突然学校に行けなくなりました。その時の記憶は曖昧で、思い出そうとしてもパズルのピースが抜け落ちたかのように断片的にしかわからないのです。思い出せるのは記憶ではなく、苦しいとか死にたいとか、黒いドロドロしたものです。

 学校に行かないことは「悪いこと」、誰に教えられたわけでもないのに勝手にそう思って罪悪感でいっぱいでした。周りの子は当たり前のように学校に行っているのに、じぶんにはそれが出来ない。『学校=自分の価値』になっていました。学校に行きたいわけではないのに、とても息苦しかったです。きっと私以上に母も苦しかったと思います。『学校』だけではなく『外に出る』ことも怖かったです。

 

 そんな時、母に連れられ「ひなたぼっこ」に行きました。十年前、設立当初の「ひなたぼっこ」です。当時は平屋の木造一軒家でした。学校のような雰囲気だけでも気持ち悪くなってしまっていたので、普通の家で安心したのを覚えています。そこには私以外にも学校へ行けない子がいました。「不登校は自分だけ」なんて、今思えばバカみたいなことを思っていたので、驚きと嬉しさが混ざり合って何だかよく分からない気持ちでした。

 

 「ひなたぼっこ」は、その子それぞれの個性・意思を大切にしてくれます。ここから少しずつ『学校=自分の価値』だと思っていた私の中の小さな世界が変わり始めました。そして、私に『家』以外の『居場所』を作ってくれたのです。「ひなたぼっこ」は不登校の子どもたちだけでなく。色々な人がいます。年齢もバラバラで、普通に生活していたら出会えなかった人たちと沢山出会えました。大切な相棒も出来ました。

 

 今は「学校に行かなくて良かった」と思っています。「学校に『絶対』行かなきゃいけない」と思っている人がいたら、それは違うよって伝えてあげたいです。その考えも違うわけではないけれど、違うんです。私も『絶対』って『悪いこと』って思っていました。行けなくなる自分がおかしくて、周りが普通なんだと思っていました。行けないことはおかしいことではないと「ひなたぼっこ」に教えてもらいました。こんな考えになれたのは、今の私があるのは、「ひなたぼっこ」のおかげです。学校に行くことを無理強いしなかった両親・家族のおかげです。

十年経った今でも私の『居場所』です。今も自分に自信はありません。でも、そんな自分でも何か力になれることがあるのか考えたいと思います。私の大好きな「ひなたぼっこ」のために。これからのみんなの『居場所』のために。

bottom of page